映画鑑賞メモ

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ポール・ウォーカーの足跡 : "ワイルド・スピード MAX ( Fast and Furious ) "のジャスティン・リン監督の音声解説を聴いてみた

 ”ワイルド・スピード MAX (Fast and Furious)”のジャスティン・リン監督のコメンタリーと特典映像を視聴。

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  ジャスティン・リン監督は3作目の「ワイルド・スピード X3 - Tokyo Drift (The Fast and the Furious:Tokyo Drift) 」で学んだことは車のクラッシュシーンはCGでは再現しきれないということだったらしく、車に関してはとにかく実際に撮影することにこだわったらしい。

 クラッシュシーンを全て実写にするため、シリーズでも車を壊した台数は最多だと。最後の方は足りなくなって壊した車を組み立て直してまた壊していたらしい。

 スタントマンのみなさんにもこの撮影が大きな挑戦だったことはメイキングをみれば明らかで、ヴィン・ディーゼルやポール・ウォーカーも自分のスタントマンが監督からシーンの説明をきいて青ざめていたり、”くそっ、やりたくない”とつぶやいているのをきいたなど語っていることからその凄まじさがうかがえる。急勾配を下るシーン、砂漠をオフロード仕様ではない車での猛スピードでの疾走、クラッシュ。メイキングをみても脳震盪度合いがすさまじいのがわかる。

  ところでアカデミー賞にスタントマン部門がないと知り驚いたのだけれど、なぜだろう。この映画に限らずスタントマンなしでは撮れなかったでろう映像は山ほどあるというのに...。

 カーアクションや格闘のみならず、いろんな場面でスタントマンの仕事は欠かせない。。私たちが目にする映画やドラマに登場するキャラクターは多かれ少なかれ俳優とスタントマンのチームワークの結晶だ。仮に俳優がどんなにスタントの多くを自分でやったとしてもそこにはスタントマンのサポートが欠かせない。

  少しググッてみたけれど”アカデミー賞にスタントマン部門を!”という運動が約30年にわったっているという記事などみかけて驚いた。

 Googleが表示した項目の中に見つけられないということは未だに設立されてないんだろうか??

 なんか摩訶不思議すぎる。

 ”スタントマンを一切使ってない作品”がノミネート条件とでもいうんだろうか??? それって相当限定されちゃうし、これまでの受賞作ざっと思い出してもそれはありえない。

 スタントコーディネーター部門とかはあるんだろうか。

 でもやっぱりスタントマン部門もあったっていいと思うのだけれど。

 

  話が随分それた。

 ワイルド・スピードの話というかポール・ウォーカーに話を戻そう。

 

 

 そのあと色々ポール・ウォーカー関連のインタビューを見たり読んだり、そして4作目の特典映像のインタビューやジャスティン・リン監督の音声解説をきいて、以前書いた記事「ジョン・シングルトン監督の音声解説を聴いてみた」で2作目と3作目のポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼルの関係についてかなりダークな推測をしてしまったことを深く深ーく反省。

・ドミニク・トレット叙事詩構想

 そもそもヴィン・ディーゼルが2作目と3作目の出演を断ったのはギャラの問題ではなく、彼は彼なりに続編のアイデアをもっていたからだ。やるならば時間をかけてストーリーを練る必要があると思い、どんなに高いギャラを提示されても断固として断った。この作品に対する思い入れが強かったからこそ納得がいく形になるまで断り続けたということだ。

 撮影中の時もシーンやセリフに関して気になることや新しいアイデアがあれば納得するまで話し合う傾向にあるヴィン・ディーゼルなのだから、その点で妥協することは絶対になさそうだ。

 加えて、ヴィン・ディーゼルが”ダンジョンズ&ドラゴンズ”やJ・R・R・トールキン作品が好きなことから叙事詩ものが好きな傾向にあるということがわかる。つまり、ドミニク・トレットの叙事詩を描くというアイデアをかなり当初から温めていたとしても不思議はない (完全な余談になるが、最近になって「ラスト・ウィッチ・ハンター 」のあのハンターがヴィン・ディーゼルだったと気がついた。ついでに彼のプロデュース作品とも知り、あの世界観設定の細かさとなぜハンターになったのかという過去にやたら時間を割いていたのか妙に納得がいった)。

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  2003年のインタビューでポール・ウォーカーがヴィン・ディーゼルが出演しないと知ってがっかりしたと口にしていたので、てっきり2作目に関して2人が直接話す機会というのはまったくなかったのかなと想像していた。しかし、改めてその記事を読み直してみるとそれは完全に自分の勘違いであると気がついた(←おい)。

 最初に読んだ時はてっきりヴィン・ディーゼルと監督が去ったことにショックを受けてわだかまりが残ったのかとうっかり邪推してしまったのだが、この人はそんなことをいちいち引きずる性格ではない(まぁ、だからこそこの記事での発言に驚いて、よっぽどショックだったのかといらぬ推測をしてしまったのだけれど...)。

 

 その時のインタビューとはざっとこんな感じ。 

ー2作目にはヴィン・ディーゼルが出演した時用のものとそうでない時のものと二つのシナリオが用意されていたというのは本当?

ポ:ううん。シナリオはもとから1つしかなかくてそれを書き直したんだ。

 ー他にも単なるインターネット上で勝手に広まった噂っていうのがありそうだね?

ポ:ははーん!ヴィンが2作目に出なかったのは僕との仲が悪いせいっていうあれね。ヴィンが2作目に出なかった理由はそうじゃないよ。

 ー違う?

ポ:うん、違うよ。ヴィンが2作目をやりたくないって知って最初はいい気がしなかったよ。それは本当。そのことを僕が記者に言ったら広報担当は相当嫌がってたけれど(笑)。でも今はちゃんと彼がどうして出演したくなかったか理解しているよ。ヴィンはメイン2人ではやりたくなかったんだ。ヴィンはヴィンっぽくやりたいんだ。「トリプルX(xXx)みたいな感じで

 −”2 Fast 2 Fruious”が完成した後にヴィン・ディーゼルとはなした?

ポ:ヴィンに電話して見に来いっていうつもりなんだけど、でもどうかな。ヴィンが見たいと思うかどうかわからないし、彼の胸の内を思えば、2作目はたいした出来ではないことを願っているだろうなって思わないでもないし(笑)。

 

 最初にこれを読んだ時こんな露骨なことインタビューで言ってしまって大丈夫なのかとすっかりうろたえいらぬ邪推をしてしまった。しかし、この時にポール・ウォーカーはヴィン・ディーゼルがなぜ2作目に出たくないかということを"ちゃんと理解した"と言っているのだ。つまりこの頃からすでにヴィン・ディーゼルが胸に温めている続編についての構想をきかされていたのではないかと(だからこそ後に「ヴィンはこの作品についてずっと長い間考えてきていたからね」という発言も出てくる)。

 私はこのインタビューを読んだ時にヴィン・ディーゼルが出なかった理由についても”ヴィン・ディーゼルは自分が主役でないと嫌だった”と早とちりしてしまっていたが、これもヴィン・ディーゼルからきかされた"ドミニク・トレットの叙事詩”の構想をポール・ウォーカーなりに要約するとこういう言い方になったというだけのことなのだろうなと。

 ヴィン・ディーゼルがやりたいのはドミニク・トレット叙事詩と理解し、「ああ、それなら確かに2作目は方向性が違うなぁ」と納得したのだろう。1作目で仕事した時にヴィン・ディーゼルのそこは譲らない性格みたいなものもわかっていただろうから、”なぜやりたくないかちゃんと理解した”という発言に繋がったのではなかろうかと思う。

 契約があったのでヴィン・ディーゼルのために自分も出ないでいるという行動はとれないし、逆にそれはヴィン・ディーゼルも理解していただろう。

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 だからこそヴィン・ディーゼルもスタジオと交渉してシナリオをなんとかしようとした。しかし、ヴィン・ディーゼルがいくら主張してもこの”叙事詩”の概念がなかなか伝わらず、スタジオ側はそこにこだわる必要性をまったく感じなかった、もしくは理解できなかったのだろう。

 つまりヴィン・ディーゼルが必要としていたのは、この"叙事詩”という概念を共有できる相手で、だからこそジャスティン・リン監督とはじめて話をした時に彼とならと自分の構想を実現できると確信したのではないかと思う(メイキングをみただけでもすぐにわかるのだが作りたいもののためにはどんなことがあっても妥協しないジャスティン・リン監督の頑固さもヴィン・ディーゼルがこのシリーズをつくる上で同志として欲していた資質だったと思う)

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 このインタビューの時点でポール・ウォーカーがどのくらいヴィン・ディーゼルのドミニク・トレット叙事詩構想についてどこまで正しく把握していたかは不明だが、ヴィン・ディーゼルがものすごくこの作品にこだわりをもっているということはまちがいなく認識していたと思う。

 そこから考えれば、ポール・ウォーカーが第4作目に出演するのにヴィン・ディーゼルから話をきくまでは出演を承諾しなかったというのは、もちろん”今更やるの?”という思いもあっただろうが、ヴィン・ディーゼルが昔からこのシリーズに関して色々考えていたことを知っていたからこそ、ヴィン・ディーゼルの意図もしくは作戦を直接きくまでは決断しないでいようと思ったのではないか(それとなーく連絡していた可能性もなくはなさそうだ)。

 正直なところポール・ウォーカーには2作目にせよ4作目にせよ続編をやりたいという気持ちはほとんどなかったのではないかと思う(この人の場合俳優としてショービズ界に居続けたかったのかどうかも微妙な感じなので)。

・追記 (2019年12月26日) : 2003年のインタビューでポール・ウォーカーがヴィン・ディーゼルが続編にでないと知って”腹をたてた”と言ったのは、それで続編が作られなくなると思ったからと言っているのを見つけた。そのせいで不仲説などいらぬ噂が飛び交ったと自分の言動を反省している。というわけで契約を結んでいたのもあるが続編が決定した時点では続編の出演にとても前向きだったということになる。

追記(12.27.2019年12月27日: 家族の生活費、学費ローンの返済などの金銭的理由からコンスタントに収入があることが重要だったと思われる。当時、映画を3本とるということで雇用されていたので給料制だったということだ。

 しかし、ヴィン・ディーゼルが当時から温めていたものをついに実現化にむけて本格的に始動させ、それで自分が必要とされているのであれば協力を惜しむことはないだろう。ポール・ウォーカーが1作目の時からヴィン・ディーゼルを友人として認識していたなら、そこはためらわない人だ。

 その辺のポール・ウォーカーの性格については友人のスコット・カーンも「友人"という言葉を使うときはヤツにとってはもう"兄弟"ってことなんだ。だからそいつのためなら全力で力になろうとする。ヤツ自身はそのことをなんでもないことのようにとらえていたけれど...」と話している。

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 ポール・ウォーカーはいつでも家族や友人を最優先に考えるとマネージャーのマット・ルーパーも語っている。気持ちのどこかにワイルド・スピードシリーズを続けたくないという思いもあったかもしれないけれど、そういうところからヴィン・ディーゼルに必要とされればとことんまでやりぬく気持ちだったのだろうなと思う。

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  1作目で培ったキャスト同士の絆が本当に強かったというのは4作目で再結集できていることからも推測できる。メイキングやジャスティン・リン監督の音声解説での再結集したキャストについての話ぶりでも1作目の現場は本当に良い現場だったわかる。

 すると不思議に思えてくるのは、どうしてジョン・シングルトン監督が音声解説で前作のヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーのシーンをみて「2人はあまり親しくなかったんだろうね」と思ったのかということだが、 タイリース・ギブソンとポール・ウォーカーの懐きあいぶりが尋常ではなかったことを思えば二人を見慣れた監督の目にはそう見えたのかもしれないし、単に比較の問題だったのかもしれない。

 

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監督もそこに特に深い意味はなく、ドミニクとブライアンの物語としてはじまったシリーズだけれど、ブライアンとピアースの物語としても十分にシリーズとしてのポテンシャルはあると言おうとしていただけのことかもしれない。

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  ジョン・シングルトン監督も51歳の若さで今年の4月に他界されている。

 無二の親友であったポール・ウォーカーを失い、その心の痛手からようやく立ち直りつつあったタイリース・ギブソンにとってはこの訃報はとんでもなく辛い喪失となったことだろう。

  下記のインタビューをみてわかるように ジョン・シングルトン監督にとっても「2 Fast 2 Furious」の撮影はとても楽しい記憶として残っているようだ。

 

 ポール・ウォーカーに見た目どおりのヒーロー的役柄をやらせるよりエッジのきいたダークな部分もみせるような役柄を演じさせたら面白いのではないかと最初に気がついてくれたのもたぶんこの監督ではないだろうか。

 

 他にもジャスティン・リン監督が音声解説でポール・ウォーカーについて話していて面白かったことを幾つか。

・なぜブライアンがFBIにいるのか?

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  最初のシナリオではブライアンは刑務所に入っていたらしい。撮影する刑務所まで決めたのに、どうにもしっくりこなくて撮影にはいるギリギリ前に書き直したらしい。 監督の音声解説によるとロケハンで行った刑務所で「もしもポール・ウォーカーが実際に刑務所に入ったらどういうことになる?」と尋ねると「スキンヘッドにでもしておかないと毎日レイプされる」と言われ、これはブライアンに相応しくないとシナリオを書き直したということだ。ポールにこの話をしたとも言っていたので、インタビューでポールがブライアンがFBIなのが納得がいかなかったけれど監督に説得されたと言っていたのはこれかと思ってちょっと笑ってしまった。そりゃFBI捜査官であることを選ぶ。 

・ドミニクが怒ってブライアンに殴りかかるシーン

  撮影したフィルムをみたポールが「腕十字の掛け方がおかしい。あれじゃ効果ない」と言い出すんだとジャスティン・リン監督が苦笑まざりに言ってたのも笑えた。ああ、絶対そこはつっこみそうだ(車好きのひとに文句を言われるんだけど...とジャスティン・リン監督が前置きするときもこれはポール・ウォーカーのこともきっと含んでるなーなんて)。

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 そういえば第1作目の時もミアのカフェでヴィンスがブライアンに殴りかかるシーンでアクションコーディネーターがつけてくれた殴り合いが本当の喧嘩っぽくないと言うだして、ヴィンス役のマット・シュルツと二人で考えて本物のストリートでの喧嘩っぽくみせた(というかほぼ実際に殴りあってみせた)という話もロブ・コーエン監督が音声解説で言ってた。

  他にも撮影用のノンアルコールビールをヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーがこっそり本物とすり替えてたという話も監督がしており、そういうところでも二人の気があっちゃってる感じが伺えておかしかった。

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