映画鑑賞メモ

ネタバレを含んでいますのでご注意ください

ポール・ウォーカーの足跡: "ワイルド・スピード X2 ( 2 Fast 2 Furious )”のジョン・シングルトン監督の音声解説を聴いてみた

 監督の音声解説が聴きたくてワールド・スピードシリーズの円盤を購入した。

 「ワイルド・スピード(The Fast and The Furious)」と「ワイルド・スピードX2 ( 2 Fast 2 Furious」を視聴したのだが、とっととこれを先に見ておけばよかった。そうすれば知りたい情報を求めてあんなに苦労してネットで記事検索する必要もなかったのに。前回覚書として記事を書きながらもどうしてもスッキリしなかった部分が大分クリアになった。  

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   1番スッキリしたのが「ワイルド・スピード」「ワイルド・スピード X2」とポール・ウォーカーの契約関係だ。特典映像の中にあった撮影中に収録されたインタビューであっさり判明した。  

 1作目の契約の中に続編についての契約も含まれていたそうな。3作目についても契約に含まれていたというので、海外ドラマで得た知識からの推察でしかないけれども、ある期間内は続編にそなえて”キープ”されていた状態ということかなと想像。

  あともう一つスッキリしていなかったのがそもそもこの「ワイルド・スピード」の一作目はポール・ウォーカーありきではじまったのか、それともストリート・レースの記事が発端となった監督のアイデアありきではじまったのか。 

 いろいろ読んだり見たりしたなか、これはやはりポール・ウォーカーありきではじまった企画だったのだろうなと思う。

 もう一度「ワールド・スピード」が起動した経緯を追ってみる。

 

・「スカルズ」のプロデューサー、ニール・モリッツとロブ・コーエン監督。ユニバーサルの契約下にあった2人はどちらが言い出したのかは定かではないがポール・ウォーカー主演で映画をつくってみたいねということになった。  

・ニール・モリッツがポールに「次はどんな映画やってみたい?」と尋ね、当時「Donnie Brasco」と「Days of Thunder」が気に入っていたポールは「レーサーの映画か潜入捜査の映画」と答えたのでスタジオ側がいいネタはないかとリサーチをかけた。

・LAのストリート・レースの新聞記事をみつけたニールが「ストリート・レースの話はどう?」とポールに記事をみせる。記事はサンバレーのペオリア通りのストリート・レースについてのもの。ポールが生まれ育ったグレンデールの場所の近くで、レースもしょっちゅう目の当たりにしていたということで、「やるやるやりたい!」となる。

  ちなみにサンバレーを検索すると怒濤のごとく違法ストリート・レースでの事故やら裁判やらの記事がヒットする。公開当時とても旬な題材だったということがよくわかる。というか、2001年前後のみならず最近に至るまで深刻な問題としてニュースで取り上げられているのだがポール・ウォーカーが子供の頃に見ていたのなら1980年代〜1980年代にも行われていたということになるし、ここはいわゆる違法ストリート・レースのメッカなのだろうか。

 地図を見ればポール・ウォーカーが生まれ育ったグレンデールからも確かに近い。ちなみにサンバレーはLAの中でも極めていろんな人種の若い人たちが暮らしているエリアということでポール・ウォーカーにとって”いろんな人種が入り混ざっている環境”が普通で当たり前というのも納得。

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・というわけでLAのストリート・レースの話はどうだろうとロブ・コーエンに記事をみせたところ、なんと当初監督はピンときていなかったらしいがストリート・レースの現場に実際に取材にいって完全にその世界にハマりアイデアをまとめ知り合いの脚本家に執筆を頼む。

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・映画が大ヒットを飛ばしたところでスタジオが続編製作を決定。

 ヴィン・ディーゼルとロブ・コーエン監督が去る。

 

 ロブ・コーエンの代わりに監督をすることになったのがジョン・シングルトン。

 「これは自分で思いつくべきネタだった!」とめちゃくちゃ楽しんで2作目に取り組んでいる。特典映像をみていて思ったのだが、ポール・ウォーカーにとっては現場としての楽しさは2作目の方が断然楽しかったことは疑いない。  

 この作品で出会ったタイリース・ギブソンとリュダクリスとは大親友になっている。

  リュダクリスのミュージックビデオのメイキングも収録されていたが「わーい!こんなにすぐに再共演できたー!」とカメオで出演したポール・ウォーカーはめちゃくちゃ嬉しそうだ。

 ジョン・シングルトン監督の音声解説をきいていてちょっと驚いたのが、監督は続編も視野にいれていたようなのでこのままブライアンとピアースの物語なシリーズになっていく可能性もなくはなかったわけだ。

 

 ジョン・シングルトンが「ワイルド・スピード X2」の監督を引き受けた時、1作目では描かれていなかったブライアンのタフさや鋭さを出したいと思ったそうだ。現場に入ってポールにその方向性を話したら1作目では演技指導がまったくなかったとポールから聞き、「じゃあ今回はどんどん演技してくれと言ったよ」と監督。

 現場で即興でシナリオを変更したり、アドリブもOK。キャストやクルーのアイデアを現場でどんどん取り入れる。キャストやクルーも監督にいろんなアイデアを提案したり試したりできる自由な空気感。同じことを繰り返すことが苦手なポール・ウォーカーの性分にあっていたにちがいない。ポール・ウォーカーに限らず「ここもダレソレのアドリブだよ」と監督の音声解説でそういった説明がいっぱいあって楽しかった。役柄の大きさに関わらず意見を取り入れている。いかにも白人のポールがストリート・ギャングのスラングを使うのもその違和感で笑えると監督が言っていたのも笑えた。それもシナリオにはなかったらしいが面白いのでそのまま採用したとか。

 監督は「車ならどんどん運転すればいいじゃないか」とポール・ウォーカーの運転技術なら問題ないと判断し、ポールが自らカースタントすることを認めてくれている。ちなみにこの時のポール・ウォーカーの運転の腕前はカースタントの講習でも「プロ級」と教官を担当していたスタントマンのお墨付き。特典映像のインタビューで「運転させてくれるならギャラなくてもいい」とまで言っている。ついでにレーサー・ライセンスも取得したらしい。(全然関係ないがオリビア・コールマンもレーサー・ライセンスを持っている。彼女が運転するシーンなどで彼女の運転スキルをしらないスタッフにあれこれ言われると「は?」とかひそかに思ってしまうそうだ)

  保険の都合で結果的には1作目の時の方が自分で運転していたという話をポール・ウォーカーがしょっちゅう話しているのをインタビュー記事で読んでいたので、結構おどろいた。てっきり2作目はCGとスタントダブルの割合が多いのかと思い込んでいたので、あらためて見ると結構びっくりするような派手なカースタントを自分でやらせてもらっているので本当に1作目の方が多かったのか??と面食らう。単純に運転した総合計時間ということなのか...な??同じメイキングの中でニール・モリッツは「ポールはすぐに自分で運転したがるので困る」と嘆いていたが。

 

  要するにヴィン・ディーゼルとロブ・コーエン監督が2作目を蹴ったことにはショックを受けたかもしれないが、ポール・ウォーカーにとって2作目はそれを補って余りあるほど十分楽しい現場体験になっていたということだ。

  そして3作目の話が浮上し、ここでもポールには契約があり要請されれば出演しなければならない状態だった。

(追記(2020年1月11日) :ポール・ウォーカーはプロデューサーのニール・モリッツと3本の映画を作る契約を結んでいたがそれがポール・ウォーカーの古いインビューから「ザ・スカルズ/髑髏の誓い (The Skulls)」を含んでのカウントだったことが判明した。オファーが来れば考えるけれど、こういう規模の大きな映画よりは小規模の映画がやりたいと考えていると当時話している

 結局ヴィン・ディーゼルが断ったことで脚本が書き直され、高校生がメインの話となったのでポールはお役御免となった追記 (2020年1月11日): 3作目はポール・ウォーカーはそもそも契約していない。2003年の2作目のプロモーションの時のインタビューで話している。高校生メインの話に脚本を書きなおしたのがジャスティン・リン監督なら彼が正式にオフーを受けたのは2005年1月のこと。そもそもポールにオファーがいっていないのではないかと。カメオの出演をしなかった件については危篤の祖父に付き添っていたためとマネージャーが話している)

 しかし、ここで気になったのがタイリース・ギブソンとジョン・シングルトン監督の存在だ

  ヴィン・ディーゼルが2、3作目と断った理由がギャラによるものなのか、シナリオの出来によるものなのか、自分のやりたいこととは違うためだったのか、まぁそれらが複合した結果なのかはよくわからないが、確かなことは「ワイルド・スピード」と「ワイルド・スピード X2」のどちらも蹴っているということだ。

(追記 (2020年1月11日) : ヴィン・ディーゼルが断ったのはシナリオが理由。いくつかのインタビューを読むと彼にはドミニク・トレット叙事詩構想があったらしい。1作目の時からシナリオにアイデアを出していた

 ジョン・シングルトン監督が続投しないことになった経緯はまったく不明だが、普通に考えればポール・ウォーカーにとって辛い話だったのではないだろうか (追記(2020年1月11日): 3作目時点でポールは契約から解放されているので問題無し。監督が3作目を続投したなら喜んで再度契約を結んだろうとは思うが)

監督が3作目も視野にいれていたとあっては余計に感じてしまう。

(追記 (2020年1月11日):ユニバーサルはが作目のヒットを受けてトリロジーにしようと決めていたようなので、監督ももし自分が監督することになった場合を考えていただろうし、ポール、タイリース、リュダクリスの3人とまた仕事をするのは監督的にも大歓迎だったと思う。)

 ポール・ウォーカーにしてみれば3作目をジョン・シングルトン監督とタイリース・ギブソンと一緒に作ることになんの抵抗もないはずだ。

 仮にポール・ウォーカーがこの時点でジャスティン・リンと直接話す機会があったとすればこの時点で3作目に出る可能性はあった気もするが、ジャスティン・リン監督はこの時ヴィン・ディーゼルの獲得にしか動いていないのでスタジオ側的にはヴィン・ディーゼルをシリーズに戻したいという意向の方が強かったということなのか、ジャスティン・リンが監督することになった時にはすでにポール・ウォーカーがすでに契約から解放されていたのか。なんとなく後者のような気がするけれどどうなんだろう。

 まぁ、単純にスタジオ側はポール・ウォーカーよりもヴィン・ディーゼルが欲しかったということなのかな。ヴィン・ディーゼルが主役をやりたいならポール・ウォーカーは邪魔でしかないかもしれないし。ポール・ウォーカーを切ってを主役で全てをまわすよという姿勢をヴィン・ディーザル側に見せたかったのかもしれないが。

 普通そんな扱いをされて平気でいられる人間などいないだろう。プロデューサーのニール・モリッツがメイキングの中でこの先何十本でも彼と一緒に映画を作っていきたいという話をしていた割に、今度二人が一緒に仕事をするのは4作目の時だったというのもスタジオ側がポールに対してそういう扱いをしたということかもしれない。4作目の時ニック・モリッツではポールを説得できなかったところをみるとそのあたりのことがややわだかまっていたのかもしれない。

(追記 (2020年1月11日):これを書いた時はポール・ウォーカーのもつ業界への不信感がこのあたりの騒動に原因があると思い込んでいたのでひどいことを書いている。深く反省)

 加えて2作目のチームの方が結束が強かったと思えば、インタビューではさんざん「2作目になぜヴィン・ディーゼルはでなかったのか?」ときかれまくったことも、ポール・ウォーカーにとってあまり気分がよいことではなかっただろう。(追記 (2020年1月11日):これについては次はブライアンはドミニクと組むのかピアースと組むのかという3作目を期待したインタビュアやファンからの質問に困ったと話していたので、気分はよくなかった、というかその辺りについてきかれるのが面倒臭かったみたいな感んじ)

 

 ジョン・シングルトン監督が音声解説で言っていたことだがポール・ウォーカーとタイリース・ギブソンがとんでもなく仲良くなってしまってこの悪ガキ二人を演技に集中させるのが大変だったそうだ(実際に大変そうだった。とくにタイリースはこの時24歳、やんちゃもやんちゃで抑えがきかない)。

 さらに監督は仲良くなったことでブライアンとピアースの関係により説得力がでたといい「ヴィン・ディーゼルとはあまり親しくなかったんだろうね。見ればすぐにわかる」と話す。

 ということから推察すると、一作目でのヴィン・ディーゼルとの仲は悪くなくとも仕事仲間として普通に良好というぐらいのレベルだったのだろう。

  そう思えば、4作目の話がでた時、「何をいまさら」とポール・ウォーカーが思ったというのは自然な流れだ。いくら時間がたっていて大分ほとぼりがさめてきていたとはしても、ヴィン・ディーゼルの意向にさんざん振り回されているのだからもうこれ以上関わりたくないと思っても何ら不思議はない。

 

 ヴィン・ディーゼルはどうやってポール・ウォーカーを説得したんだろう。

 

 ヴィン・ディーゼルの説得で最終的に4作目の出演を承諾したというのはポールがインタビューで言っていたことだ。インタビューやファンからしょっちゅう尋ねられていたこともあって、4作目に出演すればこの作品から解放されると思っていたとも言っている。

 4作目が好評を博したところから5作目と6作目の話が浮上してきた時のことだ。その時にはポールがタイリース・ギブソンをキャスティングしてくれないと契約しないと言って譲らなかったという話を書いている記事をみつけた。

 そりゃそうだ。そのくらい言ったって罰はあたらない。

 4作目の話のときにすでに持ち出していた話の可能性もある。

 

  ヴィン・ディーゼルの立場から考えると、ドミニク・トレットの物語を再スタートさせるのに別にブライアンの存在は必須項目ではなかったと思う。最終的にポール・ウォーカーなしでは4作目は成功しないとスタジオ側とヴィン・ディーゼル側みんなで同意したというのは、ニール・モリッツがそこは譲らなかっのかなという気もする。

 まぁ、マーケティング的に考えれば「ドミニクとブライアンが再び集結!」というフレーズがついた方がはるかにファンの心は掴みやすいし宣伝もしやすいからということだったのかもしれない。しかし、もしもヴィン・ディーゼルがポール・ウォーカー獲得に関してたったそれだけの理由で動いたというのなら、とてもポール・ウォーカーの首をたてに降らせることができたとは思いにくい。何か他にものすごい説得力がないとポール・ウォーカーの気持ちを動かすのは難しかったのではないかと思うのだが。

 シリーズをリブートさせると決めたとき、ヴィン・ディーゼルはポール・ウォーカーの存在をどういう位置づけでとらえていたのか。

 なぜこんなことをつつきたがるかというと、この交渉をきっかけに二人の関係が大きく変わったのだろうと思うからだ。おそらくこの時の話し合いで二人の仲は随分と改善している。そして撮影後の二人の様子をみれば、完全に仕事仲間として良好な関係」以上の関係に昇格したのは明らかだ。

 (追記 (2020年1月11日) - ジャスティン・リン監督とヴィン・ディーゼルが構想においてばらばらのピースをつなぐ鍵がブライアン・オコナーというキャラクタであることは疑いないので、リブートにはポール・ウォーカーの存在は絶対的に欠かせない。他にもポール・ウォーカーの存在が重要な鍵である理由として思い当たることがいくつかあるのだが、今がまだ推測の域をでないので別の記事に譲る)

 

 まぁ、何にせよいろんなわだかまりが解消されたことは喜ばしい。

 

・追記 (2019年12月14日)

この記事で「ワイルド・スピード X2(2 Fast 2 Furious)」と「ワイルド・スピード :Tokyo Drift ( The Fast and The Furious : Tokyo Drift)」まわりのヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーの関係についていらぬ推測を展開してしまったが、これはもう私の勘違いもいいところで、そのことについてはこちらの記事に詳しく書いてある。

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確実に言えることは「ワイルド・スピード (The Fast and Furious) 」で築かれたヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースターの信頼と友情は疑いなく本物だということである。 4作目「ワイルド・スピード MAX (Fast and Furious)」がリブートできたのはヴィン・ディーゼルの作品にかける熱意のたまものだということも間違いない。

 さらにこの記事を書いた時点では気がついていなかったがヴィン・ディーゼルはポール・ウォーカーの娘ミドゥ・レイン・ウォーカーのゴッドファーザーになっている。ゴッドファーザーということはポール・ウォーカーに頼まれて洗礼式に一緒に立ち会っているということだ。

 娘のミドゥは1998年11月に誕生している。奇しくも「ワイルド・スピード」の企画が立ち上がった年だ。教派によって洗礼式の年齢はかわるが、ミドゥの子供時代のかなり早い時期という記述も見当たったので多めに見積もってもミドゥが10歳になる2008年までにはゴッドファーザーになっていたのではないかと思う。ヴィン・ディーゼル自身に子供ができてからだとすれば2008年〜2011年以降の可能性もあるが、要はポール・ウォーカーにとって娘ミドゥ以上に大切な存在はないのでゴッドファーザー役をヴィン・ディーゼルに頼んだというのは相当な信頼関係がなければ起こり得ない話だ。ポール・ウォーカーの交友関係の広さを考えてもこの選択の持つ意味は大きいと思う。

 

 

リュダクリスが2 fast 2 Furiousのサウンドトラックに参加。

ポール・ウォーカー、タイリース・ギブソン、デヴォン・青木など2 fast 2 Furiousのキャストがカメオ出演している。

ワイルド・スピード (字幕版)

ワイルド・スピード (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
ワイルド・スピードX2 (字幕版)

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