映画鑑賞メモ

ネタバレを含んでいますのでご注意ください

ヒットマンズ・レクイエム (In Bruges)

一見そういう感じでもないのだが、見終わってみるとやっぱりかなり風変わりな映画だったように思う。

 殺し屋のレイとケンがロンドンで仕事を終えたあと、指示通りにベルギーのブルージュに向かいボスからの連絡を待っていた。ケンはせっかく来たのだからと待っている間に観光をしたがるが、レイは全く興味をしめさない。

 

 

 ブラックコメディになると思うのだが、セリフがことごとくがブラックもブラックすぎて、ヒヤヒヤしまくってしまうという。ありとあらゆるジャンルの差別発言が網羅されているのではないかと思えるほど、口を開けばブラック発言。 ちょっと待てとなりながらも、笑ってしまい、笑ってしまってから、今のは笑ってしまってよかったのかとオロオロしてしまい、感情の持って行きどころに困ってしまった。

 だからといって登場人物が皆嫌な奴ばっかりなのかというと全然そんなことはない。それなりに魅力的で嫌いにはなれないキャラ揃いだ。ただ皆それぞれにいろいろと複雑なのだ。そう複雑なのだ。

 

  英語がなかなか通じないブリュージュでの言葉の訛りについてのブラックネタも相当飛び交っていた感じ。ダブリンで生まれ育ったレイは”イギリスでおれの英語は通じないのに英語を話さないヨーロッパ人には通じる”とか、日頃訛りをネタにされているのだろうなぁとか。

 観光客いじりも凄まじい。" だからアメリカ人観光客は..."とか、”イギリス人はこれだから..."とか”オランダん人は..."と”ステロタイプ”ネタの連打。 観光客や国民性だけではなく差別関連のステロタイプな侮蔑ネタがが登場人の口から矢継ぎ早に紡ぎ出される。  

 しかし、物事はもっともっと複雑なのだ。もっと複雑にからみあっている。ステロタイプに断罪できたりするのであればシンプルであれば誰も苦労しない。

 レイとケンのほんのりと描かれる絆もなんだか切ない。初めての殺人をミスったレイをボスはケンに始末するよう命じる。始末しろというならなぜブルージュにこさせたのかとケンが尋ねると、殺す前にいい思いをさせてやりたかったからとボス。しかしおとぎ話の世界そのまんまのブルージュに来て誰も嬉しいかといえばそういうことでもないという発想はボスにはない。

 なんども繰り返すが人はいろいろと複雑なのだ。  

 

 うまく説明できないが、差別発言の薄っぺらさや暴力の無意味さ、悪気がなくとも人は人を傷つけることがあるし、相手がしでかした同じ過ちを自分もする可能性もある。自分の信じるものが、相手も信じているとは限らないし、同じものを見ながらも同じように感じているかもわからない。

  人は複雑なのだ。 とにかく複雑なのだ。 簡単には割り切れない。 人は複雑だということをわかっているようでわかっていない。わかっていてもすぐに失念してしまう。それがもたらす衝突。でもだからといって全く分かり合えないわけでもない。だからやっぱり複雑なのだ。そういったことをほんのりと感じた映画だった。  

 

私の好み度/⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 83%

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