映画鑑賞メモ

ネタバレを含んでいますのでご注意ください

NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム (Nerve)

思いがけず可愛らしい映画だった。

 

 

 可愛らしいというのはちょっと語弊があるかもしれないが、いい具合にティーンズの冒険譚に仕上がっていて、読後感というか視聴後感もさわやかでよかった。

 SNSを描いたスリラーというから、後味悪いんだろうなぁと覚悟としてみたのだが、案外オーソドックスというか、青春モノのとしてのキラキラ感がとっても定番というか、古典的というか。

 そこを手ぬるいと感じるかどうかはもう好みか映画へのこだわりの問題だろけど、90分におさめているからね。その点だけでも、よくまとめましたハンコはあげていいんじゃないかな。

 

 SNS経由で繋がる感覚をうまく表現していたなとまず感心した。SNSが当たり前に存在する世界に生まれ育った世代の冒険譚。

 主人公は大学への進学を控えた女の子ヴィーナス。ヴィーナスはいわゆる真面目な普通の女の子(普通ったって、すんごい可愛いけどね!)。親友のシドニーはチアリーダーで、ちょっとした学校のアイドル的存在。いつも周囲の注目をあつめているし、男の子にもよくもてている。

 シドニーは目下ナーブというオンラインゲームに挑戦中だ。ナーブとは登録時に挑戦者か視聴者かを選び、視聴者は視聴料を支払い、挑戦者は視聴者から提示される挑戦を時間内にクリアすると賞金が獲得できる。挑戦中は常にライブで中継し、フォローワーをたくさん獲得し、挑戦を時間内にクリアできたものが最終的に優勝できる。

 ヴィーは親友のシドニーと喧嘩をし、「臆病者!あんたなんかずっと視聴者側よ!」となじられたことにムカッ腹をたて、ナーブに挑戦者として登録。

 そこでイアンというナーブの挑戦者に出会う。イアンは男前でさらにヴィーと話もあう。一緒に”挑戦”をクリアしていくうちにどんどんイアンにひかれていくヴィー。

 

 なんだかここまで書いていてあほらしくなってきた。。

 

 まぁ、典型的なシンデレラストーリーがまず起こったと思いなされ。

 最初は及び腰だったヴィーが挑戦をクリアしていくごとに自信をまし、ついでに賞金もはいるものだから当人も楽しくなっちゃってキラキラと輝き出す。イアンは同じ挑戦者でありながらまぁ絵に書いたような”白馬の王子さま”だ。

 この文字に起こしてしまえば、”なんやねん、このハーレークィーンもどきな展開は。あほらしい”なんだけど、これをいい具合に今風にコーティングしなおしているからなんかあまりその辺気にならずに見れちゃう。パンダ模様のパンティをはいたヴィーちゃんがアンダーウェアだけで高級百貨店みたいなところを上階からおりていく様など、オトコくん達はきっと楽しいんじゃないだろうかね。高級ドレスを試着して、イアンと遭遇してちょっとした挑戦をして、試着室に戻ったら自分の服も財布も消えている。で、挑戦指令がきて”時間内に店の外にでやがれ”。高級ドレスを試着したままでるかと思ったらヴィーはいい子だからそんなことはしないんだ。「万引き犯になりたくない」。万引きするぐらいなら、あたし、下着姿で店内を駆け抜けることを選ぶ!めっちゃ、かわいいやないか!万引き断固拒否も気に入った!ヴィーは流されやすそうで案外流されないコなのだ。ほら、オトコのコ、好きだろこういうキャラ。おれもこのあたりでヴィーのことが好きになっちゃってたよ。ナーブの”視聴者”もこの辺りからココロ鷲津噛まれていった感じだったよ。

 視聴者、フォローワーを増やしたくてどんどん危ないことに踏み出していくヴィーの姿は確かにフォローワー欲しさに常軌を脱していくユーチューバーやインスタやツィッターに動画を投稿するユーザーと容易に重なるが、その成功がある種の爽快感、快感をもたらす蜜であることも、見てる側を高揚感に巻き込むことでうまく描いている。

 そして、”ああ、いまどきのシンデレラストーリーとはこういうことなのか”とやや肯定的ななイメージをもちかけた後での突き落し感がすごいのである。

 SNSが持つ負の面が一気に牙をむく。恐ろしいという気持ちと、ヴィーとイアンが挑戦をクリアしていくさまにうっかり高揚してしまったこちらにもものすごい醜悪感と罪悪感がわきあがってくる。そわそわと落ち着かない感じ。これもSNSとつきあっていればおそらく誰もが経験するであろう感覚じゃないかな。

 しかし、すぐに問題はSNSでないことに気がつかされる。

 注目を浴びたあとに手のひらをかえしたような罵詈雑言をあびるような事態。時にそれは有名税とも呼ばれるが、SNSがない時代なら、そのリスクを負うのはマスメディアに身をさらした人々のみで済んだが、今では誰でもそこに陥る機会があるということだ。

 それをするツールは手元にある。しかも年々どんどん容易になっていく。しかし、SNSはあくまでもツールでしかない。問題が起こる根本は昔からかわらない。ラストバトルがコロッセオ風だったのは、それを示したかったのかもしれないとも思える。群衆や匿名という仮面の下で、個人として問われた時、どう判断するか。結局、大事なのはそこだ。

 この映画がSNSが諸悪の根源と言いたいわけではないことは、ヴィーと仲間達がSNSならではのメリットを最大限にいかして”悪”を消滅させ勝利をつかんだところでも示されていると思う。 SNSを当たり前として育ったからといって彼らがこれまでの”若者”とひどくことなるわけでもかけ離れているわけでもない。むしろ、根っこのところはかつての自分と何一つかわらないことを知る...感じ?(オーソドックス万歳)。

 前半のシンデレラストーリーは後半から”雪の女王”へ。といっても”Let it go!"じゃないよ。雪の女王に魅入られ連れ去られたカイ少年をゲルダが探して救い出すほうのやつ。ゲルダの思いがカイ少年の胸にささった氷の破片をとかし、カイ少年は救われるあれ。

 まぁ、引き合いにだすのはこれでなくてもいいのかもしれないけど、ようは普通の女の子が王子を救う系おとぎ話。そんな感じでヴィーはイアンを救う。

 ハッピー・エバー・アフターを思わせるエンディング。無駄に恐れることも心配することもない気分になったところで。この”悪”は古くから滅びることなくいつでもどこでもすぐに現れるから気をつけなよという感じもちらっ。

 また20年もたてば、ここに登場したSNSもとんでもなく古めかしく見えるのだろう。その頃はどんなツールに囲まれて生活しているのだろうか。その頃にこの映画をみたら「うわ、古ぅー。そういえばこんなんやったわー」とか思ったりするのかと思うと楽しい。

 どうでもいいんだけど、映画冒頭でログイン画面がでたとき、無意識に「ん?パスワードいるの?」とか思ってリモコン手にしてしまった自分がイヤすぎた。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅: 67%

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