映画鑑賞メモ

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ボーダーライン (Sicario)

 突き詰めれば元検察官が殺し屋となりカルテルのボスに殺された妻と娘の復讐をする話であり、もともと法の番人であり正義感の塊のような検察官すらも冷血な殺し屋に変えてしまう麻薬カルテルとの抗争の闇と不毛さを主人公の女性捜査官の目を通して突きつけられるというような話で、ある意味クライムサスペンスの王道のような話だと思うのだが、この映画の空気感はかなり独特だ。

ボーダーライン(字幕版)
 

 

 麻薬カルテルではなく何か得体の知れぬ超常現象との闘いがはじまっているのではないかという静けさと不気味さ、それが不思議な美しさを持って綴られており、日常の中に平気で死と暴力が溶け込んでいる不気味さ、異常さを際立たせていたような感覚。とことん暑苦しくなく、少し突き放したような視点が最後まで貫かれる。非情も残酷も、恐怖や悲嘆、諦念、暴怒までも淡々と静寂の中に呑み込まれていく。もはや非日常が日常となった世界の真ん中に立たされるとはこんな感覚なのだろうか。

 興味深いが一方で間違ったユニフォームを着せられてしまったような違和感もどこか否定できない。泥臭くなろうと思えばどこまでも泥臭くなれただろうし、どんっと貫かれるような激しいアプローチもこの内容ならあったというか、そちらの方がこのタイプの話なら王道ではないかとも思うが、それだとお約束の域をでないありがちパターンな作品に仕上がっていた可能性も高い。

 好みで言えばそんな感じでこの物語を見て見たかった気もするが、この不思議な静寂をもった世界観も嫌いではない。結果、なんというか不思議な映画を見てしまったなぁと。

 

私の好み度: ⭐️⭐️⭐️⭐️/5

🍅:92%

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